[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
小さく微笑むその姿を、何度愛しいと思っただろう。
「あ、斉藤さん!おかえりなさい!」
帰って来た俺を見つけて小走りで寄る彼女。何が彼女をそんな顔にさせるのだろう。普通なら外に出られずもどかしい日々を送りながら、外から帰って来た者にその笑顔は向けられないだろう。
「今日は、どうでした?何かありました?」
そんな彼女に、何もないとあっさり告げるのはあまりに酷だと思われたが、余計な期待をさせるのもまた筋違いだと思い、小さく横に首を振った。
「そう、ですか…。」
少し、伏し目がちになる。そんな姿に、胸の奥がチリチリと焼けるように感じたのは気のせいだろうか。
「すまないな。」
「え?」
「早く、その手で父上を捜したいだろう。」
「あ、いえ…大丈夫です。皆さんに捜して頂いてるんですから。」
「ずっと屯所に籠もりきりで、不満などないのか?」
そう問う俺に、彼女は少し難しそうな顔をして微笑んだ。
「ないと言えば、もちろん嘘になります。ですが…、」
少し、言葉に詰まる。
「生きて…いるので…。」
「…。」
「新選組の皆さんは、私を生かしてくださったので…。」
「…。」
「有り難いと…思っています。」
何を言うのだろうと思った。正直に言えば、全て悪いのはこちら側だ。隠しておかなければならない者を人目に晒し、それをたまたま見てしまった一娘を監禁し、監視している。第一、そんな秘密を持っていること自体、おかしいのだ。―――なのに、
「お前は…本当に…」
「え?」
「その様に生きていると、損をするぞ。」
「ええっ?そ、その様とは…?」
おどおどと慌てる様子がまた愛らしい。思わず、口元が緩むと彼女の頬が少し染まった。そっとその頬に触れると、熱く柔らかい。触れてしまった自分に後悔しながらも、その手は引力をもって離れなかった。
「さ、斉藤さん…?」
「その様に簡単に、人を信用するなということだ。」
そう一言言うと小さな理性が俺を制し、そっと頬に口づけた。
薄桜鬼/斉藤ゆめ