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確かに私は男勝りで口も悪いし、料理だってうまくない。だけど、好きな人くらいいる。
「はじめ」
幼馴染で同級生で同じクラスで同じ部活の彼。私にとって彼の存在は、親友であり、想い人である。この気持ちに気づいたのはいつか、なんて覚えていない。もしかしたら昨日かも知れないし、生まれた瞬間だったかも知れない。
それでも、私は彼が好きなのだ。
そして彼はその気持ちに微塵も気づいておらず、私も期待はしていない。けれど…けれど、今日くらい。
「なんだ?」
居残って素振りをしている彼の元を訪れた。はじめは竹刀を止めて、こちらを見る。
「一緒に帰らない?」
「別に構わないが…まだ少し残ってやるぞ」
「うん、いいよ。私は向こうでやってんね」
私もはじめが終わるまで、素振りでもすることにした。こう見えても剣道部員の端くれだし。
しばらく素振りをしていると、はじめの声が聞こえてきた。
「待たせて悪かった」
「いいよ、私もやってたし」
「帰るか」
「うん」
そうして二人で剣道場を後にした。はじめの靴箱は私のとなり。
「はじめ、靴箱溢れてるよ」
そう指摘すると、はじめは慌ててそれを鞄へ入れた。やはりはじめはモテる。靴箱はすでにチョコでいっぱいのようだった。
「何故、靴箱に食い物を入れるんだ…?」
「…言われてみれば、確かに」
衛生的にどうなんだろう。はじめの困った顔がおかしくてつい笑ってしまった。そして、ポケットのチョコを手にする。
「んなら、はい。靴箱じゃなくてポッケならいい?」
「…あ、ありがとう」
「いいえ」
「毎年悪いな」
「…いいえ」
毎年渡しているけれど、込める意味が変わったのはいつからだろう。
「はじめ」
「なんだ?」
「毎年、美味しい?」
「…あぁ」
「今年は特別に美味しいと思うよ」
「…お前、毎年それ言っているぞ」
「そう?」
「そうだ。…だが、確かに毎年うまくなっているな」
それは、どんどんはじめを好きになるからで。
「ねえ、はじめ」
「なんだ?」
「はじめに彼女が出来たら、もうチョコあげれなくなっちゃうね」
「…だがそれは、お前も然りだろう」
「私?私には出来ないよ」
「何故そう言い切れる?」
「はじめが、好きだから」
(言おうなんて思ってなかったのに)
薄桜鬼/斉藤一夢
お題配布元:メガロポリス様
「…あ」
自分は、何を言ったのだろう?気づいたときにはもう遅い。一気に頭が真っ白になった。
何のために、何のために私はこのときまでずっと気持ちを隠していたのだろう。それは勿論、はじめと幼馴染、友人以下の関係になるのが嫌で。だから怖くてずっと言えなかったし、言うつもりもなかった。
なかった、のに――
ちらりと動揺した頭ではじめの顔を見ると、はじめも同様にぴたりと停止して動かない。動かない。目は、大きく見開いたままだ。
「…き、こえた…よね?」
「…あぁ」
ああバカ。今更誤魔化そうにももう遅い。言ったすぐ後、笑顔でなーんてね!なんて付け加えられたら良かったんだけど。二人して驚いてバカだ。
「気にすることないと思うよ」
「は…?」
「別に、見返りとか求めてないし」
「…」
「と、いうか…」
お願い。お願いだから、今までどおりのはじめでいて。
「変わらないで…」
「…、お前、何泣いているんだ」
「うー…」
「俺は変わらない。だが俺にとってのお前が変わるだけだ」
「う…?」
そしてはじめは優しく笑う。いつもみたいに。
そっと頬に伸ばされた手に心臓がひどく跳ねた。
「俺は、あんたが好きだ」
(ただの幼馴染から、大切な彼女へ)