そんなあたしの傍で大泣きするきみ。
傍からみてあたしたちは、正反対のようでそっくり。
そっくりのようで正反対だった。
「へーすけー」
「なんだ?」
「ひま。稽古しよーぜ。打ち合おうぜ」
「いいけどさあ」
「なに?不満げだな」
「また言われたんだよ。お前と打ち合いすんなってさ」
「…」
「…ま、気にしないけど?」
「そうだよ、気にすんなよ!第一、オレはお前を守るために強くなきゃなんねーんだ」
「…お前、そのために稽古してんの?」
「ん?まあ…そうなんじゃん?」
「じゃあやらねー。お前とは一生打ち合わねーし」
「なんでだよ」
「んじゃあさ、オレを守るためにオレと打ち合うっておかしくねー?」
「…」
そうだけど。…でも、オレと打ち合いしてくれるやつなんて平助しかいない。…なんだよ。女、ってだけで。
「…」
「…」
「もういいよ。じゃあ平助とは二度と打ち合わない」
結局、そうなんだ。平助も、オレのことを女ってみてんだ。女が刀を触るなんておかしい、って思ってんだ。
「待てって」
去ろうとするオレの手首を捕まえる平助。
「なんだよ」
「やっぱやめた」
「え?」
「オレ、お前と打ち合うの好きだし」
「…」
「それに、決めた」
「…なにを?」
「お前がオレを守るために強くなるってんなら、オレも、お前を守るために強くなる」
「…また、怒られるよ?」
「なんでだよ。友達守って何が悪い。これで…文句もない」
「…あほ平助」
「うるせーよ!ほら、稽古しよーぜ」
いつも、いつもあたしは昔から、平助に救われてばかりだ。
「なんで笑ってんだよ?」
「え?笑ってた?」
「笑ってたじゃん」
「思い出し笑いだよ」
「ふーん?」
「懐かしいなー、平助とばかみたいに稽古してたころ」
「あぁ、ほんとばかみたいに毎日刀振り回してたよな」
「はは、ばかだ」
「…オレさ、あんとき」
「ん?」
「嬉しかったよ」
「なに?なにが?」
「お前が、オレを守るために強くなるって言ってたとき」
「えー?うそだよ。平助怒ってたじゃない」
「まあ…それはなんていうか…情けなくなって」
「?」
「なんで女に守ってもらうんだよって」
「あ!平助実はあたしのこと女ってばかにしてたの?」
「ちっげーよ!でも気にすんじゃんやっぱ」
「…」
「…でも!でもさ…オレ、実はあの頃結構劣等感とかあったからさ」
「平助」
「ん?」
「確かに、あたしは平助の小姓として、平助を守んなきゃいけなかったけど」
「…」
「それでも、平助だからだよ。平助だから、私は平助を守ろうと思ったんだよ」
「…おう」
「平助が、平助だから」
「分かった!分かったから」
「平助…?」
「…オレも、お前だからだよ」
ずっと、救われてるんだ。
(自分だけ救われてると思ったら、大間違いだ)
今日は満月の日だったか
そっと天を仰ぐと彼が泣いている気がした。
「…、あ…いない…」
焦ってサスケの部屋に入ると、そこに彼の姿はなかった。がらりとした部屋はいつもと変わらないはずなのに、そのやけに明るい月明かりのせいか、いつもと違うように見えた。
いやな光景が頭に浮かんだ。まさか行ってしまったのか?
冷や汗が滲むのを感じると、後ろから扉の開く音がした。
「お前…泥棒かと思った」
「あ…サスケ、今帰り?」
「おう」
サスケはぶっきら棒にそう言うと靴を脱いで部屋に入る。身に着けたクナイ、忍具を片付けるとため息と共にベットに倒れこんだ。
「疲れた…」
「おつかれ」
「…なんでいるんだ?」
「う、ごめん」
サスケが心配になって来たなんて、おせっかいすぎて言えるわけがない。彼はもうあの小さな彼ではないのだから、私の手がなくても大丈夫、なのに。気まずそうに謝る私に、サスケは 別に責めてないと言葉を濁した。
「サスケも無事に任務から帰ってきたことだし…帰ろうかな」
「早いな」
「なに?いてほしい?」
「別に」
「…そう」
少しがっかりして帰ろうとする私の手を、サスケが掴んだ。思わず振り向くと、まっすぐで深い瞳に捕まった。
「…どうした?」
「…いれば」
「え?」
「まだ時間大丈夫だろ」
「う、うん…」
電気をつけていない部屋は、月明かりで満たされている。残酷なほど、優しい光。
ぎゅ、とサスケの手に力がこもる。
「いてくれて、良かった」
「え?」
「お前がいて、安心した」
ぽつりと紡ぎ出される言葉は頼りなく小さい。そっと耳を澄まさないと聞こえない。
サスケの声が聞きたくて、サスケの声しか聞きたくなくて、固く瞳を閉じた。
この光はオレはどうも苦手だ
そう聞こえた声は自嘲的で震えていたから、強く強く抱きしめた。
NARUTO/サスケゆめ
暖かい、
「…」
そして平助の香り。
なんでだろう。あれ、ここどこだっけ。
眠い目をそっと開けると、すぐそこに平助の顔があった。
「(…あ、思い出した)」
昨日はクリスマスイヴだった。
だけど結局どこへ行くわけでもなく平助の家に行って、しかも特にすることがないので仕方なしにその場にあるゲームをしていたら、意外にハマって夜中までやって…挙句の果てに床でそのまま寝てしまったというオチだ。
「(なんて間抜けなクリスマス…)」
特にいちゃこらするわけでもなく、ロマンチックな夜を過ごしたわけでもなく、というかクリスマスなんてことすっかり忘れて過ごしてしまった。不覚…といえば不覚。
そっと隣を見ると、平助がいる。小さく聞こえる寝息を聞くと、別にいいかとも思えてくる。
…というか、一緒に寝たのなんて初めてじゃない?
今更緊張するも何もないはずなのに、顔が少し赤くなるのを感じた。平助が寝ててよかった。
改めて寝ている平助を見ると…やっぱかっこいい。彼氏ばかなのだろうか。でも、顔は整っていると思う。よく見ると睫も長い。羨ましい。
いつのまにか平助の頬に手を伸ばしていた。特に何もするわけでもないけど、平助の頬にかかる髪を少し払った。
――――と、
「!」
唇に、柔らかい感触。
一瞬で離されると、にこりと平助が微笑んだ。
「寝てると思った?」
「お、起きて、」
「おはよ」
はあ、と上半身を起こして背伸びをする平助。…なんか、新婚みたい、なんて。
「起きてたの?」
「うん。ていうか俺、結構前から起きてたし」
「え」
「そんでずっとお前の寝顔見てたら急に起きそうだったから、やばいと思って寝た」
「な、寝顔って」
「可愛かったよ」
「…」
平助は真っ赤になる私の顔を特に気に留めるわけでもなく起き上がった。彼にとってこういう言葉は日常茶飯事だ。しかもからかうつもりがないから、また困ったもんで。
「ていうか俺らいつの間にか寝ちゃってたんだなー」
「ね、びっくりした」
「だよなあ。ていうか泊まりなんて、…」
「…な、何か」
「してない!何もしてない!」
「ほ、ほんとでしょうね?」
「ほんとだって」
ふう、とお互いに息をつく。何してんだろう。
「でも惜しいことしたっちゃしたよな」
「平助!」
「じょ、冗談だって」
ほら、と差し出されたホットミルクを飲む。…なんだか不思議な気分。
「…」
「平助?」
「…そ、そんなにだめ?」
「え?」
「手、出したら」
な、何を言い出すんだ!
「や、出さねぇよ!?出さねぇけどさ…その、確認っていうか」
「いるの?確認」
「い、一応」
「…」
「…や、やっぱいいや」
「え?」
「なんか傷つきそうだからやめとく」
平助はそのままホットミルクを一気飲みしてあっちい!と叫んだ。気まずそうな顔をして、昨日散らかしたゴミを片付け始める。そんな様子を見て、なんだかとても愛しくなるのは病気かもしれない。
「平助」
「ん?」
「い、いいよ」
「…」
「別に…いい」
「…そ、そっか」
「…」
平助はゴミを持った手を止めて、こちらに来て私を抱きしめた。
「あー…やっぱ聞かなきゃよかったかも」
「え?」
「聞いたらいいかなって思うじゃん」
「!」
固くなる私に気づいてか、平助は優しく微笑むとそっと頬にキスを落とした。
薄桜鬼/平助ゆめ
好きも嫌いも紙一重だってのは、自分で身にしみて分かっていた。顔を合わせれば喧嘩ばかりだけど、それでも、心のどこかに弾む気持ちがあるのは知っていた。
「…あれ、土方さん。総悟は?」
「あ?知らねぇよ。俺に聞くな」
「ふーん」
特に期待していたわけじゃないけれど、なんだか拍子抜けだったのは確かだった。別にこれといった用事があるわけでもなかったから、手持ち無沙汰になってしまう。うーん。どうしよう。
「…お前、あいつがいねぇと大人しいな」
「え?そんなことないですよ」
「俺は誰とはいってねぇけどな」
「…」
「まあいい。暇なら少し付き合え」
すでに私に拒否権はない。すたすたと先を行く土方さんに、特に反抗する理由もないのでついて行こうとする。――する。
「…じゃま、総悟」
「俺と話しもしないで土方さんとどこに行くってんです?」
「なんで総悟と話さなきゃいけないの…」
「毎日話してるじゃねぇですかい」
「話し、というか喧嘩だよね」
「どっちでもいいんでさァ」
「(…よくない)」
「とにかく、行かないでくだせぇ」
「…なんでよ」
「俺が、あんたと話すのが楽しみだからでさァ」
「…、だいたい、総悟がいなかったから、」
「俺がいなかったら土方さんのところに行くんですかィ?」
ずい、と総悟の顔が近くなる。いつもの変な真顔じゃない。真剣そのもののその瞳は少し怖い。…もしかして怒ってる?
「あんたが毎日俺と話すのは俺しかいないからですかィ?」
「…」
「じゃあもし俺がいなかったら、あんたは別の誰かとこうやって毎日話すわけですかィ?」
「…総、」
「俺は、あんただからここにいるんですぜ」
「……」
怒っていいのか笑っていいのか…はたまた泣けばいいのか。どんな顔をしていいのか、分からない。言葉の意味も、よく掴めない。
「…変な顔してますぜ」
「だ、だって総悟が急に変なこと言い出すから、」
「あんたは、俺だけを選べばいい」
「え…」
「俺だけを選んでくだせぇ」
「………自分勝手」
「今更気づいたんだったら、あんたは相当の馬鹿ですぜ」
そう言う総悟の顔はさっきとは違った。また、昨日までとも。
そうやってまた今日も喧嘩をするのだけど、これが痴話喧嘩だってことに、誰が最初に気づくんだろう。
沖田総悟ゆめ/銀魂
そこにはいつも彼がいると分かっていながら、私はそこへ赴くのだ。
「…おい佐之、いつまで寝てるの」
「…、んあ…お前か」
佐之はいつも保健室でサボる。いつもいつもいつもいつも、教室にいないと思ったらここなのだ。白い清潔な布団に気持ちよさそうに寝る佐之。何度、その寝顔に見とれただろう。
「はー、よく寝た」
「知らないわよ、授業分からなくなっても」
「ん?大丈夫だろ」
…確かに、こいつは要領が良い。頭が特別に良いってわけじゃないけど、いつも何かしら上手くこなしてしまうのだ。そこがまた、女子達を夢中にさせるところの一つでもある。
「俺には、お前がいるし」
「…は?」
出たよ、またこの軽口野郎。佐之はそういう台詞を事も無げに言う。余裕のある笑みを伴って。こっちは、そういうことを言われる度に、動揺を顔に出さないように必死なのに。…こう言われることが特別じゃないんだって、言い聞かせる。切なくなるくらいに。
「…おいお前、なんて顔してんだよ?」
「え?」
「眉間に皺寄せやがって。少しは嬉しそうな顔したらどうなんだ?」
「…なんで?」
「…え。本当に気づいてねぇの?」
参ったなこりゃ、と佐之は頭を掻く。…違う、そんなわけない。自惚れちゃ、だめだ。
「はあ…仕方ねぇな。お前には、遠回しに言っても通じねぇってことか」
「?」
「こっち、来いよ」
佐之の甘い声に誘われるように、私はベットに座る佐之の前に立つ。佐之の大きくてごつい、だけど綺麗な手が私の手を包んだ。
「俺がなんで保健室で寝てるか知ってるか?」
「…さあ。眠いんでしょ?」
「ちげぇよ馬鹿。お前が、起こしに来るのを待ってんだ」
「…へ?」
「お前に起こして欲しくて、お前と二人きりになりたくて、ここで俺は毎日寝るんだよ」
「っ…、それ…色んな子に言ってるの?」
「…はあ。お前俺を何だと思ってんだよ」
「超軽い人」
「あのなー…俺、一途なんだぜ?」
「…だ、誰に?」
「お前以外、いねぇだろ?」
「!」
その瞬間、ベットの中へ引き込まれる。佐之の顔が目の前にある。
「さ、佐之?」
「一緒に寝るか」
「ば、馬鹿じゃないの」
「どもんな、可愛い」
「!」
おでこに柔らかい感触がしたと思ったら、意地悪そうな佐之の笑みが見えた。
夢じゃないことを祈りながら、夢の中へ墜ちる
佐之ゆめ/薄桜鬼