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なんだ。何か、様子がおかしい。
「平助ー?なんか今日テンション高くない?」
「…」
ぎくり、と言う言葉がまさにぴったりというように、平助の肩が揺れた。
なんて分かりやすいやつなんだろう。不器用だなあ、そこも好きだけど。あ、言わないけどね。
「言おうか、迷ったんだけどさ…」
「なに?」
平助にとっていいことなら、あたしも一緒に喜べると思うのだけど。
そう考えたのが間違いだった。
「実はさ…じゃーん!今日朝学校にきたら机の中に入ってたんだよ!」
そう言って取り出したのは、可愛らしい便箋。
「なに…?」
「なにって、ラブレターだよ、ラブレター!」
「…」
なんて言って、呆然とするあたしは置いてけぼりで上機嫌の平助はそのまま話を続けている。
「なんか隣のクラスの子らしいんだけど、俺覚えてないんだよねー」
「…」
「どんな子かなー?ちょっと探ろうと思うんだけど、お前も来る?」
ああ、もう最悪だ。
どうせなら告白してふられたかったのに。
なに、このオチ。間接的にふられてるよあたし。
しかも相談されちゃって、超友達決定じゃん。
「ごめん…それは、行けない」
「え、なんで?」
「なんでってか…、あたしも一応女だし、その子、平助が女と一緒に教室覗きに来たらいい気しないじゃん」
「そ、そういうもんか…てかさ、そしたら」
「じゃ」
「え、待てよ」
ああ、消えたい。
ごめんね平助、平助のこと大好きだけど、大好きだから、無理なんだ。
でもむしろこの終わり方の方が良かったかもしれない。
時間がたって、あたしの気持ちが落ち着けば、またあたしは平助の超友達をやれるんだ。
その平助の隣には、違う女の子がいるかもしれなくても、あたしが平助の超友達なんだ。
―――だめだ、そんなの、我慢出来そうにない。
いつから1番じゃなきゃだめ、なんて傲慢になったんだろう。
「待てって!」
平助、実は追いかけてきていていとも簡単に追いついてあたしの手を取った。
まずい、今顔を見られてはまずい、のに。
空気の読めない平助は思いっきりあたしの顔を覗きこんだ。
「泣いてるのか…?」
「うん」
今更、嘘もつけないかな。
「なんで…?俺、なんか駄目なことしたか?」
「別に…平助は、悪くないよ」
「じゃあなんで逃げるんだよ?」
「だって、あたしまだ平助の友達でいたいもん。ふられても、友達でいたいから」
「え」
「だから、何もなかったことにして、泣いてるのも見られちゃだめ、だったのに…」
「…」
「バカ平助が、追いかけて…しかも追いつくし」
「お前足遅いんだもん」
「うるさいー」
「…ハ」
あはは、と平助は嬉しそうに笑い出した。
こいつ…どういうつもりだ、隣で泣いてるっていうのに。
さすがに怒るぞ、と平助を怪訝な顔で見つめていると、平助ははっとして向き直った。
「ごめん、あのさ…お前、勘違いしてるよ」
「え?」
「確かに、ラブレターもらって浮かれてたけど、顔も知らない相手と付き合うわけないだろ?」
「…そ、…っか」
「それに俺、本命いるしね」
「え…」
それって、どっちみち失恋じゃないか。
どうせなら言わないでいてくれれば良かったのに。
本当に、こいつはどこまでも素直だ、ばかばかばか
「だいたい、俺がいつお前のことふったよ?」
「え?」
「告白もされてないしー?」
「え?」
「いや、俺が言う。俺、ずっとお前のこと好きだった」
「え?え?」
「あんな風に泣かれたら、困る。可愛くて」
「え、ちょ、へ―――」
こっちの話なんか一切聞かずに、平助はキスをした。
優しいキスが、数秒。
「分かってくれた?」
「…うん」
「良かった。…なあ、」
「ん?」
「俺の為に手紙書いてよ」
薄桜鬼/平助夢
しょっぱくて甘いその独特な味のアイスを喉に通すと、一気に温度が下がった。
そして、そっと隣を盗み見る。
「…なに?」
盗み見、――は、どうやら失敗しているらしい。
ロクサスはアイスを舐めながら怪訝な顔でこちらを見た。
「そんな顔しなくても」
「どうせまたろくな事考えてないだろ?」
「な、失礼な!」
「じゃあ何考えてたか言ってみろよ?」
「ロクサスの横顔きれい」
「はい変態」
はあ、とロクサスはため息をついて、また前へ向きなおった。
なんで!なんで変態?真実を述べたまでなのに。
本当に、綺麗だと思うんだ。
その優しい夕日に包まれた姿は、切なくて泣きたくなるような錯覚に陥る。
「なあ、」
「なに?」
「泣きたいって、こういうことかな」
「…」
多分、そうだよ。
何故か胸にぐっと詰まるようなものが押し寄せる感覚。いや違う、感覚の、記憶。
「ロクサス、泣きたいなら泣いていいよ」
「何言ってんだよ。俺は泣けないよ」
「胸ならいつでもロクサスのためにあけてあるから!いつでも貸すよ!」
「…ほんっと、バカだお前」
ロクサスはさっきの真剣な表情を少し崩して笑った。
あ、笑った。ロクサスはほんとに綺麗に笑う。わたしたちとは違うと思う。
ロクサスのそれは、本物の美しさだ。儚さ、切なさ。
だからきっと、ロクサスは泣くことだって出来る。
ああ、それはきっと…もっと綺麗なんだろうな。
「うわ、なに」
「なにって、自分が言ったんだろ?」
「え?」
「俺のためにあるんだろ、ここ」
そう言ってロクサスは、ぎゅっと私の腰に巻きついて胸に顔をうずめた。
た、確かに言ったけど!急に、え、ていうかロクサスがそんな、…ラッキー!
「…心臓、はやい」
ロクサスのそんな指摘に冷や汗の流れるような思いがした。
「おれ、お前の心臓の音好きだ」
そう言う優しい声がくぐもって聞こえて、出るはずもない涙が頬を伝った。
王国心/ロクサス夢
ああ!あいたいあいたい会いたい!
どうか神様、私と彼にも会う権利をください。
「ううっ重い…」
なんだかひどく幸せな夢を見ていた気がする。
とても淡い、湯気のような不確かな幸せ。
だから目覚めたくなんてなかったのに、
私のその夢は何者かによって強制的に終了させられてしまった。
「ようやく起きたか…?」
「へえ…?うそ…人識みたいな声がするよ」
「みたいじゃなくて、俺だよ」
するとようやく人識の懐かしい姿が見えて、背中の重みがすうっと引いた。
(ん?もしかして乗ってた?)
「せっかく俺が帰ってきたってのに、幸せそうな顔で爆睡して起きねぇし」
「だって幸せな夢見てたんだもん」
「ふーん…起こしちゃ悪かったか?」
「ううん。現実の方がもっと幸せ」
「…」
「人識、おかえり」
「ただいま」
可愛いねお前、って優しい声が聞こえたかと思うと、あまりはっきりしていない意識の中でキスをした。
「…でも、なんで急に帰ってきたの?」
「…これ」
そう言って人識がポケットから出したのは、色紙。ん?
あ!それ、短冊だ。
「拾った、たまたま」
そう言って渡されたしなしなのそれを開いて見ると
「…これ、私が昨日書いたやつ」
「だろうな」
お前以外にこんなこと書くやついない、と乾いた笑みを零す人識。
『人識に、会いたい。あいたいあいたいあいたい』
「…それで、会いに来てくれたの?」
「仕方ないだろ」
こんなもん見つけて平気でいられるほど、
俺も余裕ないからよ
戯言/人識夢
「卒業…か」
小さく、本当に小さく呟いたつもりだったのに、この空の教室では思った以上に響いてしまった。
空っぽの教室。遠くに聞こえる笑い声。何も変わらないのに、もうその日は近付いてきている。
他愛のないことで笑い合った日々はもう戻ってこない。
「…いた」
低く綺麗な声。
よく聞き覚えのあるその愛しい音に振り返ると、
案の定思った通りの彼が教室の戸から顔を出していた。
少し呆れた顔をしている。
「何してんだ、こんなとこで。学校休みだろ」
「どうして分かったの?」
「…勘」
本当に勘なのだろう。
私はここに来ることを誰にも言ってないし、来る途中で誰かに会うこともなかった。
彼と過ごした3年間、彼は本当に私のことをよく知ってる。
「ねえサスケ、そこ座ってよ」
「…」
サスケは私の視線の先を見て、一つ溜息をついて言う通りにしてくれた。
私の二つ、斜め前。サスケと私の場所。
「もう、最後だね」
「別に一生の別れじゃねぇんだから」
「じゃあサスケは寂しくないの?これから別の学校なんだよ?」
「…それでも、会うだろ」
「会いに来てくれる?」
「お前が来い」
「ちょっとー。いつも私から?」
膨れて机に顎を乗せると、サスケは優しく笑い、それを隠すように前を向いた。
ああ、その仕草が好き。
この角度から見る綺麗な耳の形も、声と共に運ばれてくる風に揺れる漆黒の髪も。
「いっつもそうやって盗み見てたよな」
「人聞き悪いなあ。堂々と見てます」
「怖いな」
「自分の彼氏を堂々と見て何が悪いのよ」
ふん、とそっぽを向いて窓の外を覗いた。
私は窓側の席だから、いつも運動場を見ていた。
今日も部活動生だろう、楽しそうな声、真剣な声が聞こえる。
と、振り返ればいつの間にかサスケが机の前に立っていた。
目が会った次の瞬間、当たり前のようにキスをした。
「…教室でしたの、体育会の放課後以来じゃない?」
「…そうかもな」
「先生に見つかったら怒られるね」
「あぁ」
「ねえサスケ」
「ん」
「毎年ここにきてさ、こうやってキスしようよ」
「…なんでわざわざここに来るんだ」
「いいでしょー、それで毎年思い出すの」
「…気が向いたらな」
「もう」
そうは言っても、サスケは優しく微笑んでいたから、きっと一緒に来てくれるのだろう。
そしていつもどおり、優しいキスをしてくれるに違いない。
(思い出は色あせるけれど、1年に1度、あの日々を恋しく思う日があってもいいでしょう?)
NARUTO/サスケ夢
あいにくの、天気。
「ねえユウ…晴れないね」
「そうだな」
「ちゃんと見て言ってよ」
私が空を見上げて言ったその言葉に、神田ユウは少しも任務の書類から目を離さずに適当な相槌をうった。
嫌なやつだこと。そんな不満たらたらの私の視線に気づいたのか、神田は面倒くさそうに眉間に皺を寄せてこちらを見た。
「…でも別に雨降っちゃいねぇだろ」
「ユウさあ、今日が何の日か忘れてるでしょ?」
「あ?」
「今日は空が晴れてないといけない日よ」
そう言って短冊を握り締めた。この空の下、こんな彼の隣では願い事を楽しく飾る気にならなかった。そんな私の行動にやっと七夕だと理解したであろう神田は、一つため息を落として報告書を机に置いた。そしてゆっくりと近づいてくる。
「ユウ…?」
「何を書いた?」
「…、教えない」
そう必死で抵抗したけれど、それは虚しくあっさりと破られた。私の短冊はもうすでに神田の手中だ。ま、見られて困ることじゃないけど。
「…ユウ、が…世界一、幸せに…なりますように…?」
「そうよ」
「…お前、自分のこと願えよ」
そう言って仕方なさそうに私を見つめる瞳はさっきよりもずっと優しい。
だって、だってねユウ
「じゃあ、ユウが私の頬に手をそえてくれますように」
「は…?」
「ぎゅっと抱きしめてくれますように」
「おい」
「そっと優しいキスをくれますように」
「お前なあ…」
「だってね、ユウ」
私を世界一幸せな女の子してくれるのは、星なんかじゃなく貴方だけなんです
Dグレ/神田ユウ夢