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07.14   comment (0)

確かに私は男勝りで口も悪いし、料理だってうまくない。だけど、好きな人くらいいる。

「はじめ」

幼馴染で同級生で同じクラスで同じ部活の彼。私にとって彼の存在は、親友であり、想い人である。この気持ちに気づいたのはいつか、なんて覚えていない。もしかしたら昨日かも知れないし、生まれた瞬間だったかも知れない。
それでも、私は彼が好きなのだ。
そして彼はその気持ちに微塵も気づいておらず、私も期待はしていない。けれど…けれど、今日くらい。

「なんだ?」

居残って素振りをしている彼の元を訪れた。はじめは竹刀を止めて、こちらを見る。

「一緒に帰らない?」
「別に構わないが…まだ少し残ってやるぞ」
「うん、いいよ。私は向こうでやってんね」

私もはじめが終わるまで、素振りでもすることにした。こう見えても剣道部員の端くれだし。
しばらく素振りをしていると、はじめの声が聞こえてきた。

「待たせて悪かった」
「いいよ、私もやってたし」
「帰るか」
「うん」

そうして二人で剣道場を後にした。はじめの靴箱は私のとなり。

「はじめ、靴箱溢れてるよ」

そう指摘すると、はじめは慌ててそれを鞄へ入れた。やはりはじめはモテる。靴箱はすでにチョコでいっぱいのようだった。

「何故、靴箱に食い物を入れるんだ…?」
「…言われてみれば、確かに」

衛生的にどうなんだろう。はじめの困った顔がおかしくてつい笑ってしまった。そして、ポケットのチョコを手にする。

「んなら、はい。靴箱じゃなくてポッケならいい?」
「…あ、ありがとう」
「いいえ」
「毎年悪いな」
「…いいえ」

毎年渡しているけれど、込める意味が変わったのはいつからだろう。

「はじめ」
「なんだ?」
「毎年、美味しい?」
「…あぁ」
「今年は特別に美味しいと思うよ」
「…お前、毎年それ言っているぞ」
「そう?」
「そうだ。…だが、確かに毎年うまくなっているな」

それは、どんどんはじめを好きになるからで。

「ねえ、はじめ」
「なんだ?」
「はじめに彼女が出来たら、もうチョコあげれなくなっちゃうね」
「…だがそれは、お前も然りだろう」
「私?私には出来ないよ」
「何故そう言い切れる?」
「はじめが、好きだから」

(言おうなんて思ってなかったのに)

 

 

薄桜鬼/斉藤一夢
お題配布元:メガロポリス様

07.14   comment (0)

さあやってきましたバレンタイン。と、ばかりにこの島の人たちも心なしか浮き足立っている。年頃の彼、彼女は勿論、小さい子からお年寄りまで、想いを寄せる相手に気持ちのこもったチョコを贈る。こんな素晴らしい行事はない!と、思うのに。
若いはずなのに、しみったれた顔をしているのが一人。そして、その一人が意中の相手であるあたしは、本当に困ったものだ。

「だいたい、バレンタインってお祝いする日じゃないだろ?」
「いや、そうなんだけどさ」
「みんな少しは自粛して、司教様にお祈りしに教会へでも行ったらどうなんだ」
「…チハヤさ、なんでそんなにバレンタイン嫌いなの?」

もしかしてもらえないから、と続けようとして止めた。何故なら彼の部屋にはすでに何個か、チョコだと思われるラッピングの箱や袋が置いてあるからだ。

「…いいね、君は呑気で」
「な、あたしだって呑気じゃいられないよ?」
「なんで?」
「なんでって…、」
「まさか君も誰かにチョコを贈るとか言うの?」
「…そのまさかだよ」
「…君のチョコをもらう人は不運だね」
「チハヤなんだけど」
「…え?」
「チハヤにあげようと思ってきたの!」
「君は僕を殺す気?」

確かに。確かに私は殺人級に料理が下手だけど!だけどそんな言い方って!

「愛があれば食べられるでしょ?」
「ないから無理」

あ。あ。あ。
あ。今の、ひどい。

「…あー…分かった、ごめん、言いすぎた」

チハヤが気まずそうに謝る。そりゃそうだ。この涙、どうしてくれるんだ。

「食べるよ」

そう言ってチョコよりもあたしの頬に手をかけるチハヤ。ぺろり、と涙がチハヤの舌で掬われた。

「あー、しょっぱい」
「自分が舐めたんじゃん」
「いいんだよ。しょっぱいものが欲しかったから」
「…」
「そのまま泣いててもいいよ」
「ほんと、意地悪だね」
「分かってて、好きなんだろ?」
「…そうだよ」

まだ不貞腐れたままそう言うと、チハヤは一瞬驚いた顔をして、満足そうに微笑んだ。
なんだこのやろう。

(すきすきすきすき!)

 

 

牧場物語/チハヤ夢
お題配布元:メガロポリス様

07.13   comment (0)

がちゃり。

鬱陶しいインターホンの音にドアを開けると、そこには禍々しい刺青をいれた可愛い殺人鬼が立っていた。

「なに…?おかえり」
「なに、って…ただいま」

今まで寝ていたからよく頭が理解出来ていないみたい。ぼーっとした頭でよく考えてみる。あ…、そっか。人識が、帰って来たんだ。

「今回の放浪はまた随分と長かったね」
「んー?そうだな…また色々と巻き込まれてよ」
「ふーん…」

私は適当に相槌を打つ。本当は何かつっこんで訊きたいところだけど、人識は何も話してくれない。それは人識曰く、私を巻き込みたくないから、らしい。
―――らしい、けど。
それですんなりと納得出来るほど、そこまで大人にもなれず、かといって我侭を言うのも気が引けた。彼が、私のためだと断言しているのだから、信じるのが、正しい道なのだろう。

「また面倒なこと考えてんのか?」
「え?」
「眉間に皺寄ってんぞ」

額を小突かれて、寝起きの私はばたんとまた布団に倒れてしまった。

「寝てたのか?」

そう言いながらも人識はすかさず私に覆いかぶさった。さわやかな笑顔つきで。

「ただいま」

彼に似合わない優しい声で呟かれてしまったから、抵抗もせずキスをした。甘く、濃いそのキスは、何かに似ている。

「…んでさ、お前今日何の日か知ってる?」
「ごめん人識。私今日が何日かも知らない」
「俺よりまともな生活してるってのに、大丈夫か?」
「大丈夫」
「そうは思えないけどな」

そこで人識はひとつ、ため息。知らないんじゃ仕方ないかと呟くと、少し残念そうだ。

「なあに?誕生日?」
「…なあ、それは俺の誕生日を忘れてるってことか?」
「…」
「頼むから何か言ってくれ!」

そう叫ぶ人識を尻目に、カレンダーを見た。

「あ。バレンタイン?」
「…正解」

たった今まで気づかなかった私。勿論、用意してるわけもなく。…まあ知ってても、人識が帰ってくるか分からないから用意しなかっただろうけど。

「ごめん。ない」
「…だろうな」
「あ、だからって人識のこと愛してないわけじゃないよ。大好きだよ、愛してるよ」
「かなりの棒読みだが多めに見よう。もう一回言ってくれ」
「しつこい男は嫌いよ」
「一回で十分です」

そこで人識は悪戯っ子みたいに微笑むと、再度私に覆いかぶさる。今度は、しっかりとした体制で。

「お前でいいよ」

そっと聞こえたそれは、チョコレートよりもずっと甘い。

 

 

戯言/人識夢
お題配布元:メガロポリスさま

07.09   comment (0)


そうです。エクソシストにバレンタインなんてない。
分かってはいる、分かってはいるんだけど。

「はあ…まあ、そうだよね」

今日中に戻るとはやっぱ思ってなかったけど。期待は、少しあった。

今、ラビはここにはいない。
一昨日からAKUMAを退治しに行っていて、今日には戻れないそうだった。
そのときのラビは勿論、

「な、何言ってるんさ!ぜっっったい戻る!」

なんて言っていたけど、無理なものは無理だ。余計な期待を抱くのはもう止めよう。そう諦めて目を閉じようとした、そのとき。強引に戸を叩く音がした。

「…た、ただいま!」
「…ラビ?」
「ごめん、寝てた?」
「いや」

がちゃりと扉を開けると、ラビの姿を確認する前に思い切り抱きしめられた。

「今何分さ?」

抱きしめられたままでは見にくいのだが、なんとか身体を捩って見ると、バレンタインが終わる5分前だった。

「11時…55分」
「セーフ!」

嬉しそうに叫ぶラビを見ると、笑みがこぼれる。わざわざ私のチョコを貰うために、この日に帰ってきてくれたんだ。そしてそっと体を離す。

「チョコ、くれるか?」
「うん」

はい、と手渡すと夜中にも関わらず、よっし!とラビは叫んだ。

「オレ生きててよかったんさ」
「大袈裟だなあ」
「嘘じゃないんさ」
「…で?何個もらったの?」
「え?」
「何人から何個もらったの?」
「い、いやー…」
「怒らないから言ってごらん」

バレンタインに喧嘩なんかしたくない。

だけどあと1分。あと1分でバレンタインも終わりだし。

これもまた愛です。

(帰ってくるんじゃなかった、なんて言わせない)

 


Dグレ/ラビ夢

07.08   comment (0)


今年も例年通り、苦めのチョコを作って彼の元へ向かった。

「サスケ」
「あぁ」

当たり前のように鍵を開けてもらい中へ入り、相変わらずのシンプルな部屋へ。

「どう?大漁?」
「…そこ」

そう指された先には、山のようなチョコが。
さすがサスケ様。サスケ様のファンには休日なんか関係ないようです。

「これみんな届けに?」
「いや…郵送もあれば、ポストに入れてるのもある。大家さんから苦情がきた」
「なんて?」
「荷物が溢れてるからさっさと取りに来い」
「…」

その光景、少し見てみたかった。
ポストから溢れ出してるチョコなんてなかなか見れない。

「あたしも作ってきたけど…いらない?」
「いや…ありがとう」

素直にお礼を言うサスケが少しめずらしい。

「…なんだよ。じろじろ見るな」
「いや…珍しく素直だね」
「…お前のチョコは甘くないからな」

そう言ってサスケが気まずそうに見た先は、すでに何個かチョコが開けてあった。
どれも完食はしていないものの、手をつけた痕がある。

「そう言ってもらえると、作った甲斐があるなあ」
「…にやにやしながら見るな」
「なんでよ。食べてるところを見たっていいでしょ。作ったんだから、それぐらい権利あるわよ」
「…」
「どう?美味しい?」
「…あぁ」
「やった」

にこにこと顔が緩むと、サスケは仕方なそうにため息をついた。

「お前はほんとのん気だな」
「なによ。のん気じゃ悪い?」
「いや?そのままでいろ」
「え…」

そんな台詞に驚いているうちに、私はあっという間にサスケの腕の中に収まってしまった。
ぎゅ、と抱きしめられ、肩にサスケの吐息を感じる。

「ずっと、変わるなよ」
「…サスケ?」
「お前だけは」

私はなぜかその台詞に幸せだけを感じることはできなかった。

(どんな思いで彼はそのことばを)

私が癒せるのなら、どんなことでも

NARUTO/サスケ夢

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